プレゼント




 今日は仲良し四人組、藤井奈津実、有沢志穂、紺野珠実と、屋上で一緒にお弁当。
「あ〜もう10月なんだよね〜」
 奈津実の言葉に三人はうんうん。
「来月は文化祭もあるし」
「あ! それ言わないでよ〜! もうこの時期になると、氷室先生、いつも以上に恐ろしくなるんだからーっ!」
 頭を抱えるの姿に──ちなみには吹奏楽部。アンドロイド氷室の顧問のクラブだ──奈津実は大袈裟に笑い声をあげ、珠美は『大丈夫だよ、ちゃん!』と、肩を叩いて励ましの言葉。そして志穂は溜息を一つ。
「あなたたち、いいわね、呑気で。二年生も後半に入ったら、真剣に進路を考えないといけないのに」
「また〜、志穂、あんたもたまにはそーゆー事から離れなさいよ。そりゃーアンタの好きな守村は一流大学確実だろーから、一緒に行きたいって気持は解るけどー」
「なっ……わっ……わたしは別に……」
 途端に真っ赤になる志穂は、おカタイ感じが消えて可愛い。珠美とは小さくくすっ。本当に女三人もとい、四人よると賑やかだ。
 と、そこではふと、思い出したことがあり思わず『あ』
「ん? どした? 
 すぐに奈津実が尋ねてくる。は慌てて手を振った。
「ん、何でもない。ちょっと思い出したことがあっただけ」
「思い出したこと? なになに?」
 ずいっ! と奈津実は身を乗り出す。は内心ちょっと『ヤバ……』奈津実がこうして聞いてくる時は、言わなきゃ絶対解放されない。
 それでもは諦めず(?)足掻いた。
「でも……別にたいしたことじゃないんだよ?」
「たいしたことじゃないなら、言ってみなよ」
 ……そうきましたか、奈津実さん……。
 ──うー……しょーがないなぁ……。
「……あのね、単に、今月葉月くんの誕生日が来るから、プレゼントどうしようかな……って」
「あー、そーですかー、はいはいー」
『聞いたアタシが馬鹿だったわ〜』 そんな感じで奈津実は引き下がる。変わって珠美がに言った。
「葉月くんって、10月生まれなんだ」
「そう、16日。ん〜今年は何をあげようかなぁ……」
 去年は猫のジグソーパズル。葉月はとても喜んでくれたが……。
 ──んーっと……この前みかけた猫ミミ枕なんていいかも。すっごく可愛かったし。
 がそんなこと思っていると、奈津実がちょっと悪戯っぽく言った。
「そんなの決まってるじゃん」
「え? なっちん、何かいいものあるの?」
「プレゼントはア・タ・シ。なんてのやってみれば?」
「「「………………」」」
 三人思わず沈黙し、ついで志穂と珠美はふーっ……。そしては真っ赤っ赤!
「なっ……何言ってんのよ、なっちん! そんなことできるわけないでしょっ!」
「あ、そーよね。アンタたち、そんなことしなくたって、って奴だもんね」
 ──え?
 奈津実の言ってる意味が解らず、はちょっときょん、とする。
「なっちん、何言ってるの?」
「何って、そのまんま。てかさー、本当のトコ、アンタたちどこまで行ってんの?」
 ──ドコまでって?
 は意味が解らないが、志穂と珠美は解ったらしい。
「なっ……奈津実ちゃん、そーゆーの聞くのって……」
「あまり、他人のプライベートなことまで詮索するのは、感心しないわね」
 珠美は真っ赤になりながら、志穂は少し顔をしかめて、そう奈津実をたしなめる。しかしは相変わらずハテ?
「なーによー、いいじゃない。この中でちゃーんと付き合ってる相手がいるのって、だけなんだからさー。アンタたちだって、興味あるでしょ?」
 そこまで言われてようやくも、奈津実が言っていた意味を悟った。その瞬間に大焦りっ!
「ちょっ……ちょい待ちっ! あたしと葉月くん、そんなんじゃないよ!」
?」
「だっ……だからっ! 付き合ってるとか、そーゆーんじゃないんだって!」
 これは嘘じゃない本当のこと。そりゃあ一緒にいることは多いが、ただの友達と変わらない。
 ──そ……だよね。友達……だよね。
 ちょっと親しい男友達。それ以上でも以下でもないのだ。何故か時々そう思うと、胸がきゅん、と痛くなるが。
 だがしかし他の三人は、そんなを一斉にじーっ……。
「……なっ……何? みんな……」
「アンタと葉月、付き合ってないって?」
「う……うん」
「毎日のように一緒に帰ってて?」
「う……うん」
「茶店で仲良くお茶してて?」
「てゆーか、それって他の人ともしてるし」
「ほぼ一週置き……下手すりゃ毎週デートしてて?」
「デートって……ただ誘いあって、一緒に遊んでるだけだよ?」
「勉強も、運動も、休み時間雑誌読むのも、二人一緒で?」
「だって……葉月くん、頭いいし……スポーツ万能だし……モデルだから、流行にも詳しいし……」
「修学旅行の自由行動、一緒のあげく、枕投げで隠れた時なんか、二人で一緒の押し入れに入ってて?」
「あっ……あれはただの偶然っ!」
「クリスマスのプレゼント交換だって、二人で交換してて?」
「してないっ! あれも偶然!」
「新年の初詣、手繋いで一緒に行って?」
「つか、なっちん! なんでそんなことまで知ってるのよっ!」
 次々暴かれる自分と葉月の、行動にさしものも怒りっ! しかし奈津実はしれっ、として。
「この奈津実さんの情報網を甘く見ちゃ駄目よ〜」
 ……とても素晴らしい情報網で……。
「で、それでもアンタたち、付き合ってないって言うわけ?」
「だっ……だって……」
 口籠るに追い打ちは二人。
「高校生にもなって、現状の認識ができないのはどうかと思うわよ、さん」
「し……志穂さん……」
「うん……そんなに仲良いのに、付き合ってないのって変だよ、ちゃん」
「珠ちゃんまで〜〜〜〜〜っ!」
 だって本当にそうなのだ。お互い……言葉とか言い合わないし、手を繋いだりはするけれど、それ以上の触れ合いもない。
 ──ホントのことなのに……。
 お弁当箱に顔を伏せて──ちなみに中身は残っている──は『う〜っ……』と一人で呻きっ! この、の様子を見て、他の三人は顔を見合わせた。
 ついで奈津実が。
「…………」
「……なによぅ……」
「……マジ、アンタたちって、何もない……つーか、付き合ってないの?」
「だーからっ! さっきからそう言ってるのにっ!」
 がばっ! と顔を上げて叫べば、三人は一瞬大沈黙。そして……次に響くは爆笑!
 ──えっ? なっ……なにっ?
「…………アンタ……顔……」
 ──顔?
「ご……御飯粒だらけ……だよ、ちゃん……」
 ──あ……。
 さっきお弁当の箱の上に、顔伏せた時にくっついたらしい。
「……あなたって……ほんと……」
 あの志穂でさえも笑っている。は慌ててポケットから、鏡を出して御飯粒を取った。
 ──も〜〜〜〜っ! なんか最悪〜〜〜〜っ!
 一通り御飯粒は取ったが、顔がバリバリしてしまっている。はパタン! とお弁当の、蓋を閉めると立ち上がった。
「あたし、顔洗ってくるね」
「ん〜、いってらっしゃい〜」
「転ばないようにね、ちゃん」
「ハンカチ、忘れないでね、さん」
 三人にそう声をかけられ、は屋上を後にして行き……。


 さて、残された三人は。
「でもなぁ……マジでと葉月って、何もないんだ」
「あんなに仲良いのにね」
さんが鈍いせいじゃないの?」
 鋭い志穂のこの言葉に、他の二人はうんうんうん。
「葉月はもー、端で見てるだけだって、にメロメロって解るのにね」
 ……メロメロってそんな、奈津実さん……。
「そうだよね、葉月くん、ホントにちゃんのこと、好きだよね。この前鈴鹿くんが言ってたんだけど、修学旅行の最終日の朝早く、すんごい音量の目ざましが鳴ったんだって。部屋中の全員が驚いて飛び起きたら、それ、葉月くんの目覚ましだったんだって」
「へぇ……アイツ、目覚ましで起きられたんだ」
 奈津実のツッコミに珠美は『ううん』
「葉月くん、それでも起きなくて、でもその目覚まし、止め方が解らなくって、もう、全員で必死になって葉月くん起こしたらしいよ」
「………………」
 ……すごすぎるぞ、葉月珪……。
「で、『なんでこんな目覚ましなんかかけたんだっ!』ってみんなで詰め寄ったら、葉月くん『今日……と自由行動一緒に回る約束してるから……』って……」
「「………………」」
 奈津実と志穂、思わずしーん……。
「……葉月……のことになると見境ないな……」
 しかし、そこまで思われてて、何で付き合っていないのだろう?
「やっぱ……ちゃんが鈍すぎるのが原因かなぁ……」
「多分ね」
「つーか、葉月……よく我慢してるよ……」
 この年代の男の子。好きな子をいつも目の前にしてたら、何かと色々大変(……)だろうに……。
 と、そこで奈津実はピン!
「ね、アタシ、いいこと思い付いたっ!」
「え?」
「志穂、珠美、ちょっと耳貸して!」
 奈津実はぐいっ! と志穂と珠美の、肩を両手で引き寄せて……。


 そして──16日、葉月の誕生日。
「さーてとっ! 今日はまっすぐ家に帰ろうかな〜」
 授業が終わったところで、大きく伸びをしてそう呟いた。どうせ来週からはクラブの、地獄の追い込みが始まるのだ。少しはのんびりしたいから。
 ──今日はバイトもないし! 家でゆっくりしーようっと!
 がそう、思った時。
ちゃん」
 聞こえて来たのは珠美の声。見れば珠美が珍しく、教室の中まで入り込んで来ている。
「珠ちゃん? どうしたの?」
「あ……うん、えっとね。相談したいことがあるの。ちょっと……付き合ってくれる?」
 ──相談?
 何やら珠美は深刻そう。こんな友達を放ってはおけない。は『うん』と頷いた。
「いいよ。どこで話す?」
「えっと……屋上……行かない?」
「ん、わかった」
「ありがとう、ちゃん」
 珠美はほっとしたように笑う。どうやら悩みは深いらしい。
 ──珠ちゃん……悩み出すと止まらないようなとこ、あるからなー。
 アドバイスなんて大きなことは、できないかもしれないけれど、話を聞くことくらいはできる。
「じゃ、行こっか、珠ちゃん」
「うん!」
 二人は並んであるき出す。廊下に出て、階段を上がり、屋上へ続くドアを開け、外に一歩踏み出した瞬間。
 ばさっ!
 ──え?
 何か柔らかい布のようなものが、自分にかけられたと同時に真っ暗。
 ──え? え? え?
 そしてドンッ! と突き飛ばされ、は大きく転がりっ!
 ──なっ、なにっ? なになになにっ?
「たっ、珠ちゃん?」
「ごめんね、ちゃん」
 ──ごめんね……って……。
 慌ててバタバタもがき出すが、何やら布製の袋か何かの、中に閉じ込められたのか、あまり大きな身動きが取れない。
 ──なっ……なんなの、これっ!
「少しの辛抱だから、おとなしくしててね、さん」
 志穂の声まで聞こえてくる。どうやらに袋をかけたのは、待ち構えていた志穂らしい。だが、こんな訳の解らない、状態で大人しくしてなんかられない!
「ちょっとーっ! なんなのよーっ! こらっ! 説明しろーっ!」
 袋の中でじたばたじたばた、は暴れて叫びまくるが、それ以後返事はもらえずに……。


 さて、同じ頃。
 他のクラスの友達に、が連れ去られて(?)行くのをぼーっと、見送った葉月は小さくフーッ……。今日、もらったプレゼントのお礼に、お茶にでも誘おうと思ったのだが、そのあてはどうやら外れたようだ。
 ──仕方ないか。
 女同士の友情を、邪魔するのはやはり気がひける。葉月は一人で帰ろうと、カバンを持って廊下に出た……ら。
「葉月! あ、いたいたー!」
「………………」
 この声はの友達の一人、ひどく騒々しい女。確か名前は……。
 ──……忘れた。
 ……忘れた……って、オイ、葉月……。
「ねーねー、アンタさ、今日誕生日なんだって?」
 ──何で知ってるんだ?
 ……って、あなたは職業モデル。プロフィールってのは公開されてます。調べようと思えば簡単です。……奈津実の場合は調べたのじゃなく、が言ったので知ったのだが。
「で、アンタに誕生日プレゼントがあんの」
「………………」
 何でコイツがプレゼントを? の友達と言うだけで、自分と接点ないはずなのに。
「つーか、の友達、志穂と珠美も一緒に、なんだけど」
「俺……アンタたちからもらう理由……ないけど」
「アンタになくてもこっちにはあるのっ! いいから来るっ! 来ないとアンタ、一生後悔するよっ!」
 奈津実はバンッ! と葉月の背中を、右手で思いっきり叩いた。葉月は思わず顔をしかめる。
「俺は……」
も待ってるんだけど」
 ──が?
 さっき友達と出て行ったはずだが、それと関係あるのだろうか?
「……行く」
「はい、素直で大変よろしい。って、あーっ! アタシいつの間にヒムロッチ口調にっ! つか葉月っ! 早く行くわよっ!」
 勢い良くまくしたてられて、葉月はとにかく歩き出した……。


 そして──案内されたのは屋上。
「……ココか?」
「そう、早く行きなさいって」
「………………」
 全然訳が解らないながらも、葉月がドアを開けるとそこには……。
「ねーっ! いったい何なのよーっ! 珠ちゃん! 志穂さんっ!」
「………………」
 二人の女子に挟まれて、口をリボンで縛られてある、大きな袋が置いてあり、その中からは……の声。
 ──……何なんだ……? これは……。
「何ぼーっと突っ立ってんのよ、葉月。あの袋の中のものが、アンタへのプレゼントよ」
 ──中のもの……って……。
「こら、出せーっ! 出してよーっ!」
 袋の中で暴れているものは、の声を発していて……。
「早く出してあげれば? このままじゃさん、窒息するわよ」
 そう言ったのは片方の、眼鏡をかけた少女……志穂。
「あ……ああ」
 言われて葉月は袋に近付き、口のリボンをしゅるん、と解いた。同時にばさっ! と出てくるのは。
「出せーっ! あ、出た。一体何を……って、はっ、葉月くんっ?」
 熱がこもったのか顔を紅く、上気させて叫ぶ。そして目の前の葉月に気付き、もっと顔を紅く染めた。
「なっ……なんで葉月くんがここに……? の前に珠ちゃん! 志穂さんっ! なっちんまで揃って、一体何を……!」
「プレゼントよ」
「……はい?」
「うん、プレゼント」
 志穂と珠美の言っていることが、解らないのかはきょん。やっと大人しくなったのを見て、奈津実が葉月の背中を叩いた。
「ど? プレゼントの感想は」
「……もらって……いいのか?」
「そのために用意したんだけど? あ、いらないなら返品可ね。引き取り手ならいーっぱいいるから」
「返さない、絶対」
 即答葉月に少女達は苦笑。だけは訳が解らず、きょんとしたままで全員を見てたが。
「ま、そーゆーことで。じゃ、アタシたちは帰ろっか、珠美、志穂」
「うん」
「そうね」
 珠美と志穂は頷いて、奈津実の方へ歩き出す。
「ちょ……ちょっと待ってよ、みんな……きゃっ!」
 慌ててみんなを引き止めようと、も歩き出そうとした。だが足元の袋にひっかかり、バランスを崩してたおれかけ──たのを葉月が抱きとめた。
「は、葉月くん……」
「……ドジ」
「ウッ……」
 だがそう言いながらも葉月の顔は、ひどく優しそうなもの。そんな二人に他の三人は、ふーっと思わず大きな溜息。
「……後は二人で勝手にやって頂戴」
「ああ……サンキュー」
「葉月くん、プレゼント大事にしてね」
「ああ、大切にする」
「でも、まだお持ち帰りは不可だからねっ! そこんとこだけはよろしくっ! じゃーねっ!」
 志穂、珠美、奈津実の順で、言うと三人は屋上を出て行き──。


 残された葉月とそしてまだ、訳が分かっていないは。
「あ……あの、葉月くん」
「何だ?」
「……そろそろ……離してくれないかなー……なんて」
 そう、二人は転びかけた、を葉月が抱きとめたまま。
「……悪い」
「ううん、こちこそ、支えてくれてありがとう」
『それにしても、何だったんだろ、なっちんたち……』
 は袋から抜け出すと、律儀にそれを畳み始めた。
「こんなものまで用意して……それに葉月くん、どうしてここに?」
「……プレゼント……もらいに来た」
 ──プレゼント?
 って、はもうあげたが?
「お前の友達が、プレゼントくれるって言って……それ、もらいに来た」
 ──あ、なるほど。
 だがあの三人がこの葉月に、プレゼントなんてどうしたのだろう?
「で、何をもらったの?」
 袋をきちんと畳み終えて、ついでにリボンも畳み終え、は葉月を見上げて聞く。
「……お前」
「え? あたしはもうあげたよね、プレゼント」
 そう、決めてた猫ミミ枕。葉月はとても喜んでくれた。
「じゃなくて、お前」
 ──え?
 どうもよく意味が解らない。が首を傾げていると。
「だから……お前……もらった」
 ──お前……もらったって……って……。
「あたしーーーーっ?」
 思わず叫べば葉月はこく。はがっくり肩を落し。
 ──なっちんたちーーーーっ!
 いったい何を考えてるんだっ!
「もぅ……ごめんね、葉月くん、なっちんたちの冗談に付き合わせちゃって。あとでなっちんたちにはよーく言っておくからっ! ったく〜〜〜〜っ!」
 と、そこではふわっ……背中に暖かい温もりを感じた。
「俺は……本気」
「葉月……くん?」
「もう……お前は俺のもの」
 耳元で聞こえる葉月の声。気が付けばは後ろから、葉月に抱き締められていて……。
「は……葉月くん……」
「……イヤ……か?」
 ──イヤか……って……。
「あのね、そういう問題じゃなくて、さっきも言ったけど、これってなっちん達の冗談……」
「俺は……違う」
「葉月くん……」
 ──こっ……これって……。
 思いもかけぬ展開に、は内心大焦りっ!
「……イヤ……か?」
 だがくり返し、切ない声で、聞いてくる葉月に慌てて言った。
「いっ……イヤじゃない……けど……」
「……けど?」
「……突然の事で……戸窓ってマス……」
「……俺も。……でも、何か勇気、出た」
「勇気?」
「ああ」
 それから葉月は腕を解き、正面からに向き直って。
「俺……お前のこと……好きだ」
 ──え……えええっ?
 いきなりの告白には驚きっ! この、葉月が自分のことを……?
「言うと……お前を失いそうで、恐くて言えなかった……。でも、何だかアイツらに、背中押された気がした……だから……」
「葉月くん……」
 緑がかった葉月の瞳が、じっと自分を見つめている。痛い程真剣で優しい瞳に、もやっと自分の気持が、ちゃんと解ったような気がした。感じていた胸の痛みの理由も。
 だから、も真面目に答えた。
「あ……あたしも、葉月くんのこと、好きだよ」
……」
 その答えに葉月は再び、をそっと抱き締めて……。


 しばらく二人でそうやって、ひとしきり優しく触れあったのち……。
「……帰るか?」
「うん、そうだね」
 葉月の言葉にはこくん。
「あ、それとも」
「え?」
「これから俺の家……来るか?」
 ──はいぃ?
 思わずはすささささーっ! 告白の後、こんな時間に、家に誘われるということは……?
「はっ……はっ……はっ……はっ……」
 このの焦りように、珍しく葉月は声をあげて笑った。
「……冗談」
「あーっ! またっ!」
 からかわれたっ! とが思わず、両手を振り上げ殴る振りをすると。
「……俺、お前の事、大切だから……」
 ──え?
「葉月くん?」
「だから……お前を傷つけたり……したくない」
「………………」
「まだ俺達子供だし……自分にちゃんと責任持てるまで、俺……」
 それだけ葉月はのことを、真剣に真面目に考えてるのだ。何だかそれが嬉しくて、はちょっと俯いた。それからトン、と葉月の胸に、自分の額を押し付けて。
「ありがと」
……」
「嬉しいよ、あたし、葉月くんがそう思ってくれて……」
 言いながら見上げて微笑めば、葉月も優しく見つめており……。
「じゃ、帰ろ! もうすぐ暗くなっちゃうし!」
「ああ……そうだな」
 二人は一緒に歩き出した──。


「うわ! 夕焼けだよ! すっごく綺麗! 見て見て葉月く……きゃっ!」
 帰り道夕焼けを目の前に、葉月を振り向いたはまた、バランスを崩して転びかける。だが、やっぱり隣の葉月が、手を掴んでそれを止めた。
「ほら、気をつけろ」
「……あ、ありがと」
 は礼を言って葉月の、手を解こうとしたが葉月はぎゅっ! 握ったの手を離さない。
「葉月くん?」
「また……転ぶかもしれないだろ」
「あ……うん」
 二人はそのまま歩き出す。
「ね、今度の日曜、一緒に紅葉狩りに行かない?」
「ああ……行く」
「お弁当作って行くからね! 期待しててねっ!」
「ああ」

 夕焼けの中を手を繋いで、一緒に家へと帰る二人。何も変わってないようでいて、だが繋いでいる手と同じように、互いの心をしっかり繋いで──。


                               プレゼント 了


葉月くん、お誕生日ものです。
普通はさんが葉月くんにプレゼントをあげるものでしょうが、
たまにはこーゆーのもいいかな、と。
やつかさん的に、高校時代はプラトニック、卒業式まで友達以上恋人未満っていうのが
基本なんですが、今回お誕生日なんで、一応告白まで(笑)
ん〜でも、キスくらいさせてあげればよかったかな〜。ごめんね、葉月くん(笑)
あ、この駄文、一応10/16日までは版権フリーのお持ち帰り自由です〜。
でも……宜しかったらBBS、もしくはメールでお知らせして頂けると嬉しいです!
(↑つか、持って帰る人いたらの話だって……)

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